研究オタクな令嬢は、ドラゴン【研究対象】に夢中。
ゆっくりと減速しながら、ネグルヴァルトへと降下するヴァイルの首をそっと撫でる。
こうしてヴァイルを撫でるのもあと何回あるのだろうと、切なさに浸りながら鱗の感覚を何度も確かめた。
翼の羽ばたかせるその音も、どこまでも響く鳴き声も全部確かめられなくなるのだと、切なさが一気に加速する。
地面に降り立って、ヒューリのエスコートに任せながらネグルヴァルトの土を踏みしめる。
ここが全ての始まりの地、イリアを魅了するもの達が溢れる宝箱のようなもの。
輝く宝石よりも煌びやかなドレスよりも、眩しく幸せが詰まったものはこの森と時間を共に過ごす彼らとの時間。
森全体を見渡すようにドレスの裾を靡かせてその場で回ると、イリアの姿を見つめるヒューリと目が合った。
「やっぱりイリアはこの森にいる時の顔が一番輝いてる」
「え?」
「さっきまで……泣いていたんだろう?」
泣いていたことを知られていて、目を逸らしかけたが真っ直ぐ見つめるヒューリから逃げなかった。
彼になら何だって話せる自分がいることを知っていたのだ。