研究オタクな令嬢は、ドラゴン【研究対象】に夢中。
明日という文字に焦りを感じたが、心配そうに見つめる二人に無理矢理作った笑顔を咄嗟に作る。
ようやく見つけた嫁ぎ先が王族というだけであって、これでもう二人には迷惑を掛けずに済むのだ。
そう思えばこの一件を上手く咀嚼して飲み込むしかなかった。
「これで私の未来も安泰です。明日に向けて準備をしますね」
「イリア……」
「なんでそんな顔をするですか。ようやく見つかった嫁ぎ先ですよ!もっと喜んで下さい」
暗い表情の二人をいつもの様な顔に戻したくて、空元気でその場を凌ぐ。
イリアの演技を見破れなかった二人はまだ腑に落ちない部分はあるものの、イリアの背中を押すように笑顔を向けて侍女達に支度の手伝いを任せた。
寝癖のついた髪が揺れる鏡に映る自分の姿に、イリアは目を背ける。
ーーこの私が、王族の妃になるの?
不安が付き纏うばかりで、ようやく見つかった嫁ぎ先だというのに見えない何かに押しつぶされそうになるのをぐっと堪えた。
こんな急遽婚約者が出来たという非常事態で、花嫁支度は一切出来ていない。
明日はとりあえずのお披露目会ということであって、式を挙げるわけではないはずだと花嫁支度はとりあえず後回しにした。