研究オタクな令嬢は、ドラゴン【研究対象】に夢中。
取り囲んでいた使者がバラけるように移動していき、残された一人の使者がすっと背中を押すようにエスコートしてくる。
それに任せるようについて行くと、真っ赤な質のいい絨毯が敷かれた長い長い廊下を歩かされる。
磨かれた窓から差し込む微かな光が点々と続き、その上を歩くようにしながら進んでいくと微かに人のざわめき声が聞こえてきた。
ここに来て唯一の顔見知りであるアルロス第二王子が傍にいてくれれば少しは安心できるはずだと、少し先を歩く使者に恐る恐る声を掛ける。
「あの……アルロス様はどちらに?」
一応婚約者である自分を迎えに来て欲しかったと、少々我儘な意見を胸にしつつ答えを待つ。
少しの間が空いて、使者が淡々と答えた。
「謁見台にて準備を進めておられます。貴女様もお披露目用の衣装に着替えていただきます」
「はい」
王子も王子で何かと忙しくしているのではしょうがないと、この対応に渋々納得し案内された部屋へと入る。
そこにも口元を黒い布で隠した女性達が待ち構えておりイリアが着くや否や、頭を垂らす。
変わった挨拶が王宮では主であって自分が見慣れていないせいだと、その挨拶に迅速に対応すると奥から一人の女性が衣装を持ってきた。