研究オタクな令嬢は、ドラゴン【研究対象】に夢中。
痛みに耐えながらアルロスを横目で睨みつけるが、彼の顔は歪んだ笑みが宿っていてイリアには興味を示していない。
「それは我らがあの死の森から見つけ出した恐ろしい魔物だ!こいつらがいたからあの森には近づけなかった!だが、今日からは違う!この私がこの者達を滅ぼし、あの森に平和をもたらすとここに誓おう!」
訳の分からない言葉を並べるアルロスに説明を求めようと口を開くが、大きな獣の咆哮のように騒ぎだてる民衆達がそれを阻む。
台の上にいる二人に向かって石を投げつける者や、武器を掲げる者など正気な人間がいるようには思えなかった。
「辞めてください!一体これはどういうことですか!」
民衆の声にかき消されないように声を張るように叫ぶと、アルロスが怪しげな微笑を浮かべた。
「何って見ればわかるだろ?お披露目会に決まっているだろうが」
「何を言って……」
「あそこにいる魔物達のお披露目会だ。この場で処刑する」
「……!やめて……やめてください!!彼らは、私のっ!!」
大切な人達なのだと伝えようと掴まれた髪をどうにか振りほどこうと試みたが、勢いよく謁見台の柵に体を押し付けられる。
「十分把握しているよ。君があの森で何をして来ていたのか全部ね。君は薬物への詳しい知識だけでなく、素敵な玩具まで独り占めして。あの玩具で遊ぶには、君が僕のものになれば全て丸く収まると考えた結果、君に婚約を申し込んだ。これで君の玩具で僕が遊んでも何ら問題はないだろ?それにあの森には薬の材料となるものがわんさかとあるからな」
じりじりと謁見台の柵の角に頬を押し付けられると、皮膚が擦れた衝撃で血がじわりと滲む。