研究オタクな令嬢は、ドラゴン【研究対象】に夢中。
それを合図にしたようにイリアの首元にも怪しげな光を纏う一本の剣が突きつけられた。
「皆の者よく聞け!この女は僕に甘い言葉を使って近寄ってきた魔女の末裔だ!この女がこの悪魔を使ってこの国を侵略しようとしていたのは明白だ!よってここに魔女とその魔物の死の判決を下す!」
高らかに言い放ったアルロスの言葉に、民衆は盛大な盛り上がりを示し興奮を抑えきれずに吠えた。
「ここに集まった皆の者のその目で、今日という記念すべき日に赤き血を振舞おう!」
「「うぉおお!!」」
アルロスの持つ剣と死刑執行人が手にした大鎌が大きく上へと振り上げられ、全ての動きが遅く鈍く映る。
ーーこんなの、おかしい……嫌、私まだヒューリに好きって伝えてないのに……。
こうなることを知っていればヒューリに気持ちを伝え、嫁ぎ先の事もエリー達に相談を持ちかけていた。
望まぬ未来がやってくることに悔しさと悲しさが溢れ、腹の底から声を出した。
「ヒューリ!私、貴方の事が大好きだった!!ううん!大好きよ!!」
ちゃんと面と向かって伝えたかった言葉を近づく最期に振り絞って、声にする。
剣が振り下ろされる音すらもゆっくりに聞こえて、イリアはその時を待った。
こんな状況で迎えてしまう死に、天国にいる両親はきっと怒りをぶつけて来るのだろうかと、幼い頃に怒られた時の両親の顔を思い浮かべた。