研究オタクな令嬢は、ドラゴン【研究対象】に夢中。



人の手によって命を落とした両親に似なくていい所で、自分も同じ道を辿ってしまうと思うと申し訳なくなった。

体験したことのない痛みに襲われながら暗闇に落ちる恐怖よりも、これまでの幸せがイリアを包み込み大丈夫だと言って聞かせてくれていた。

死を目前としたイリアだったが、ヴァイルの大きな咆哮と共に横で苦しむアルロスの声が聞こえ、はっと目を見開いた。

「俺の大切な人に気安く触るな」

優しい香りと温もりが一瞬にしてイリアを包み込み、気がつけばイリアを強く抱き寄せるヒューリがそこにいた。

「ヒューリ……?!」

「イリア!怖い思いさせて悪かったな」

状況が掴めないのはイリアだけでなく、周りにいた使者達も狼狽えている。

一人の使者がゆっくりこちらへ近づいてきたかと思えば、着ていたローブを脱ぎ捨てた。

輝く黄金の髪が風に揺れ、その腰に仕舞っていた剣を音を立てずに抜き取った。

「我が名はライジール。この国の第一王子、ライジール・マキタリア・エルドゥターフである!弟よ、これまでの残虐な行為、我が目がしかと捉えた!逃げ場はないと思え!」

苦しみに藻掻きながら横たわったアルロスに容赦なく剣の切っ先を向けると、垂れ幕の奥から複数の兵士がやってくると周りにいた黒ずくめの使者達が取り押さえられた。





< 158 / 177 >

この作品をシェア

pagetop