研究オタクな令嬢は、ドラゴン【研究対象】に夢中。
下にいる民衆も兵士たちに連行されていく様子を、イリアは訳も分からないと言った様子で見つめることしかできなかった。
「すまない、イリア・バーリアス殿。弟を取り押さえるために巻き込んでしまって」
「あの……?」
「ライジール。もう俺の仕事は終わっただろう。イリアは返してもらうぞ」
「安心しろ。そのつもりだ」
何故この状況になって置いてけぼりを食らっているのは自分なのだと二人に目配せしていると、ライジールは剣を鞘に収めた。
「弟の陰謀を阻止するべく、ヒューリに協力を仰いだんだ」
「二人は友達なんですか?」
「いや、少し前に出会ったばかりだ。イリアを送った帰りにライジールに待ち伏せされていたんだ」
「疑問も多いことだろう。現場は取り押さえられた事だ。私の部屋に来てゆっくり説明しよう」
ライジールが部下の兵士たちに指示を出し、絶望に満ちた目を向けるアルロスに向き直った。
「アルロス」
「俺の名前を呼ぶな……下衆が」
「父上より伝言を承った。王位継承権を剥奪すると共に、この国からの追放を命ず……とな」
「……っが……クソが、クソがクソがぁあ!!俺が全てを壊すつもりだったのにどいつもこいつも俺の邪魔をしやがって!俺が何をした!我武者羅に努力してお前よりも先に立ってやろうとしても、蔑まされ見下される!全部お前のせいだ!」
捕らえる兵士を今にも全力で振り払おうとするアルロスに、再び剣を抜いたライジールは鋭い目を彼に向ける。
鋭さの中に兄として弟に向ける最後の優しさが灯っていることを、イリアは見抜く。
ーーきっとあの方は、ライジール様のことを慕っていたのね。それでも離れていく兄という存在に憧れがいつしか嫉妬に変わって……取り返しのつかないことになったんだ。
ライジールが向けた優しさをアルロスが汲み取れるわけもなく、厳重に取り押さえられたアルロスは謁見台より離れ連行され姿を消した。