研究オタクな令嬢は、ドラゴン【研究対象】に夢中。
まず、王族の第一王子には代々受け継ぐ国の秘密を受け継ぐのだという。幼い頃からドラゴンの事を知っていたのも、そのせいだった。
その国の秘密というものが、ヒューリ達の住むカデアトの存在と、カデアトへの入口を守るネグルヴァルトの正体だった。
ドラゴン達が地上での生活をしていた頃、この世界には魔法というものが満ち溢れ世界を潤わせていた。
魔力はその人個人に備わったもので、個体差が生まれるのも必然的だった。終いには魔力を持たない人間が多く産み落とされていった。
そしてどの時代にも争いがあるように、魔法が栄えていたその時代にも魔力を持つ者と持たぬ者の衝突が次第に大きくなりその時代の兵器として扱われたのがドラゴンであったという。
ドラゴンの破壊力は大地を切り裂き、海をも無くす程の力があり、それによって人間の住むべき環境が失いかけた。
「その時代に生き残った唯一の賢者、デウス=アリウムは醜い争いを終わらすべく、魔力の持たぬ者ではたどり着けないカデアトを生み出し、そこを守る深き森を作り出した。そして魔力を持つ者にドラゴンを託し地下世界での生活を任せた。全てはこの世界で暮らす人々の平和とドラゴンの命を守るために。……ここまでが私が知っているこの世界の歴史だ」
「……御伽噺みたい」
「私もヒューリ達に出会わなければ、全て嘘だと思っていた。だが、実際に彼らはそこで暮らしている。そのことは一番イリア殿が分かっているだろう」
勿論だと強く頷くとライジールが小さく微笑み、首にかけていた月の光を宿したような輝きを持つ、ムーンストーンの雫が埋め込まれたペンダントを手に取りながら話を続けた。