研究オタクな令嬢は、ドラゴン【研究対象】に夢中。
それと同時に、伝えなければならない気持ちが溢れ出て来ることに気づく。
この手を握りしめてくれる大切な人に向けての自分の想いを、今伝えるべきだと。
「あのね、ヒューリ」
イリアが口を開いたのを見計らったかのように、ヒューリは初めて見るこの森の姿を目に焼き付けようと彼女の手を引きながら森の中へと進む。
新鮮な森の空気は、人を苦しめるような有毒な成分は全く含まれていない。
今まで知っていたネグルヴァルトとは違う姿だというのに、妙に落ち着いていられるのは今まで世話になってきた自然は何一つ変わっていないからだった。
奥に進むにつれ流れる小川のせせらぎや、鳥達の囀りが心地よい音色を奏でている。
そして辿り着いたカデアトへと繋がる縦穴、ネクリアが姿を表す。
「太陽の下で見るこの入口は迫力が違うわね」
「それはイリアもだ」
言われた言葉の意味が分からずヒューリの顔を見ると、彼は真っ直ぐな眼差しでイリアを見つめていた。
瞳の奥底で揺れる深い森の息吹がイリアを包み込む。