研究オタクな令嬢は、ドラゴン【研究対象】に夢中。
自由を感じる空間で、自分の好きなことをとことん追求できるこの空間に入れる幸せが全身を走る。
この森に入るためにイリアは独学でこの森の生態系を調べ、何度も何度も失敗しながらも答えを導き出した。
日中は霧に覆われて近づくことすら許されない場所だが、夜になるとその霧は浄化され近づくことが可能になることを。この森に生息する植物はかなり効果が高い薬草になるということを。
ここまで来る途中でランタンにいれた薬草の塊も、イリアが見つけたこの森ならではの特徴から作り出したもの。薬草の中に含まれるのはこの森の木の葉で作られている。
この森の木は金属に触れると、凄まじい速さで木の幹を触れた金属よりも固くし発光する特性がある。それは木の根から他の木にも伝わり、森が明るくなる言わば防衛本能が働く木なのだ。
森の中で火を扱わずに且つ明るい状況で作業ができることもあって、イリアは暗闇の中の目印としてもこの特性を使っている。
それら全てをイリア一人で見つけ、我がものにして研究に没頭している日々。ただひとつ言うなれば、何故この森は陽の光を拒み、毒素を放つのか。それだけがまだ解明できていない。
「こんなものかな」
出来上がった薬を小瓶に詰めて、森の光に透かして見ると綺麗な鈴のような音色が鳴り響く。
「ちゃんと上手く調合できたみたいね」
森の中に意思があるかのように、イリアの成功はこうやってこの音が教えてくれる。それを頼りに、怪我などもしながらもいくつもの正解を見つけ出した。
「これを公に話したら……一体この森はどうなっちゃうんだろう」
見つけた答えは独り占めにすることは決してしてはいけないと言われていたが、この森に関してはイリアは言い出せなかった。