研究オタクな令嬢は、ドラゴン【研究対象】に夢中。
「ヴァイルの傷を、君が治したのか?」
「え、ええ。翼に傷があったから、自分で作った薬を塗ってあげて…」
「あの地上で、君は生活してきたと言うのか?!」
いきなり肩を掴んできた青年に、ビクリと体を反応させてしまうと青年はイリアの肩を咄嗟に離した。
「ご、ごめん。驚かせるつもりはなかったんだ。ただあの呪われた地上で人が生きていたなんて、信じられなくて」
「ネグルヴァルトのこと?」
「ネグ……?君は何か地上のことをよく知っていそうだけど」
「そりゃあ、まあ地上で生活しているもの」
キッパリと言い放つと、青年は瞳を輝かせてイリアの手を取り、顔を近づけてきた。あまりの近さに心臓が飛び跳ねそうになるイリアに、青年はますます食いついてくる。
「予言通りだ……!君は賢者デウス=アリウムの教えにある、女神なんだろう?!」
「……め、女神?というか、あなたは誰?」
「ああっと、紹介が遅れてすまない。俺はヒューリ。クルスデル族の長の息子だ。どうぞよろしく」
イリアが研究オタクのスイッチを入れた時同様、興奮した顔でイリアのことを見つめる青年ーーヒューリは、イリアの手を強く握りしめた。