研究オタクな令嬢は、ドラゴン【研究対象】に夢中。
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手始めは荒れた手と爪を徹底的に綺麗に磨かれ、今後傷が一つ増えるごとにペナルティとしてコルセットの締め付けをきつくするという鬼のような課題が課せられた。
ネグルヴァルトでの研究は直に植物に触れるため手に傷を作るのは抗えないものだと思っていたが、重たいペナルティに自ら首を差し出すのは何とも馬鹿らしい。
研究する際にも細心の注意を払う必要があると、頭のメモに大きく書きつける。
ーーお茶会って貴族令嬢達の交流の場のはずなのに、ここまで色々と気を使わなければならないものなんて……世の中の貴族令嬢も大変ね。
元々貴族令嬢達とは違った生き方をしてきたイリアには他人事に思えたが、今は自身も貴族令嬢であることには変わりはない。
ーーちゃんと意識することは意識しなきゃ。私はやるのよ、やってみせるって決めたんだから!
燃える心で挑み続けようと試みたイリアではあったが、その心は開始数分で燃え尽きることになる。
次々と降り掛かってくる試練に目が回りそうになるのをぐっと堪えるので、精一杯な程無縁だったことに頭も体も追いつかなかったのだ。
「しっかりと前を見つめて。背筋は真っ直ぐに、顎は引いて。……ああ、違います!もう一度!気を引き締めて!!」
座る時の美しく見える姿勢の特訓は研究中に前にのめり込む癖があるせいで、何度もエルメナに叩かれるように直される。歩き方も同様、美を見せつけるための仕草や腕の振りなど数えたらキリがない程に指摘の山がイリアを襲った。
エルメナの言われた通りに体を動かしてみるものの、慣れない動きにぎくしゃくしてしまうばかりで、その後も動作の一つ一つにバツ印を付けられていくように、エルメナのダメ出しが入り続けた。
研究するための書物を漁るための語学の知識は飛び抜けてあるイリアだったが、それ以外の教養は最低ラインよりも低いとエルメナに評価を付けられた。