研究オタクな令嬢は、ドラゴン【研究対象】に夢中。
日がやや傾き始めた頃、ようやくイリアを解放するようにエルメナの指導する手が止まる。
「今日はここまでにしましょう。これからお茶会まで毎日、私が教育係として徹底的に教えていきますから覚悟してくださいね」
「どうぞよろしくお願いします」
ヘトヘトになっても尚、エルメナに言われた品のある声でしっかりとそう答えたイリアにエルメナは今日初めての頷きを見せてくれた。
普段なら嬉しさが込み上げて来るはずだったが今の彼女にはその体力すらも惜しかった。こうして終わった貴族令嬢としての第一歩目は、子鹿のように体を震えながら幕を下ろした。
玄関までエルメナを見送った後、肩の力を抜こうとしたが寸前の所で力を抜くのをやめた。
ーー終わったからってやめていいものではないわよね。日頃の意識が自然と身につくはずだもの。
日中みっちりと言われた姿勢に気を配りながら、指摘されたことをよく考えて自室までの道のりをしっかりとした足取りで歩いた。
ただ体は正直で、自室に入った途端ベッドへと無意識に体を運ばせた。気づけばベッドに飛び込むような形で、横になっていた。
「疲れた……」
研究に没頭する日々でもこんなにも疲労したことがなかったイリアは、この疲れがきっといい未来に繋がってるはずだと信じることにした。
窓から差し込む夕日の光に、これから待っている楽しみへと頭を切り替える。
「夜は研究が待ってる……疲れたし少しだけ休みましょ……う」
押し寄せてくる睡魔には勝てずに、ふかふかのベッドに漂う太陽のいい香りを堪能しながらそのまま眠りに落ちた。