研究オタクな令嬢は、ドラゴン【研究対象】に夢中。


メモを引っ張り出して並べた薬草の名前を書きなぐる。とりあえずで昨晩使った薬草を片手に、ヴァイルの翼を見つめた。

使った薬草は地面から引き抜くと悲鳴を上げ、その悲鳴を聞くと失神、最悪の場合死に至ってしまうマンドラゴラをベースに、ネグルヴァルトでしか咲かない神経毒素が強く含まれる風船のような花のブルストルの葉を混ぜたもの。

調合した薬に実際の傷薬としても使われているヘルンという植物の樹液を混ぜ合わせれば、その薬は完成する。

森の中でちょっとした怪我でイリアも使ったことはあったが、あんな短期間で傷が治るとは思いもしなかった。

「ドラゴンって元々治癒能力が高いの?」

「いや、防御能力は高いが傷が完治するのには多少の時間がかかるんだ」

いつの間にかイリアの隣にやって来たヒューリがイリアの疑問に答えを示すと、すぐさまメモを取った。

「じゃあ……これからちょっと実験してもいい、かな?」

ヒューリとヴァイルに許可を取るように目配せすると、ヴァイルは嫌な顔せずイリアに顔を近づけた。

「擽ったいのは嫌だけど、それ以外なら。だとさ」

「ありがとう!擽ったいことはしないから安心して!」

鞄の中から瓶詰めにされた薬草達をいくつか取り出して、腕をまくった。こんな形で自分が調合した薬をドラゴンに試す日が来るとは夢のようだった。

まずは手始めに瓶の中から液体にした薬を、ピンセットを使って一滴ヴァイルの爪に垂らす。

するとたちまちにしてヴァイルの爪が急成長するように、鋭く伸びた。


< 56 / 177 >

この作品をシェア

pagetop