研究オタクな令嬢は、ドラゴン【研究対象】に夢中。
「綺麗……」
白を基調にしつつ季節に色づいていく一輪の花を思わせるような綺麗なグラデーションで彩られたドレスは、今まで着てきたドレスの中で一番しっくりくるものだった。
零れたイリアの言葉を聞き逃さなかったアゼッタは、鏡に映るイリアに向かって頷いて見せた。
「ではお姉様、お茶会はこちらを着て参加しましょう」
「でも、お金が勿体ないと思うんだけど……」
「お母様にはちゃんと許可を取ってありますからご安心ください。それにそのドレスもお姉様に買って貰えた方が幸せだと思います。とっても似合っておいでですから」
周りにいた店の者たちも賛同するように微笑んで頷いてくる。慣れない視線に俯いていると、アゼッタが使用人に目配せをし何も言わずともあっさりと会計を済ませてしまった。
初めての自分を着飾る買い物にドギマギしていたイリアだったが、何故か妙に嬉しくなってきた。
店の外に出てからは今度は馴染みのないお菓子屋に足を運び、近くの噴水広場のベンチでのんびりとこの街で人気のマカロンを堪能していると、アゼッタがイリアの顔を見つめながら小さく笑う。
「どうかしたの?」
「お姉様がすごく嬉しそうな顔をなさっているから、こっちまで嬉しい気分になっているんです」
口の中に入れた途端にゆっくり溶けだすマカロンを頬張ると、聞き覚えのあるそのセリフに何故か顔が熱くなった。
ーーヒューリにも同じように言われたんだった。なんか妙に擽ったくなるのはどうしてかしら。
目の前にマカロンが置かれているにも関わらず、まったくそちらには興味はないとでも言わんばかりにイリアを見つめてくるアゼッタに、この疑問を投げてみることにした。