研究オタクな令嬢は、ドラゴン【研究対象】に夢中。
「っ……!ご、ごめんなさい!」
あまりの顔の近さに思わず身を引こうとするが、バランスを崩してまた倒れそうになるのをヒューリがすぐさま抱きとめた。
尚更近づいた顔にこの前と同じように顔が熱くなる。
心配そうに見つめてくるヒューリの視線から逃れようと身じろぐが、ふと恋愛指南書に書かれていた言葉を思い出す。
ーーそう言えば、上目遣いをしてみたら相手の気持ちが揺れ動くとかどうとかって書いてあったわよね?
ここで実践してみるのも悪くはないと、見つめる彼の瞳を覗き込むように上目遣いでじっと見つめる。
ーー指南書を読み込んだところでいざやってみないと本番の時に困るし……身近な異性がヒューリしかいない、し。
謎の言い訳を頭の中で呟くが、この動作をして相手がどんな反応してくるのか、恋愛指南書には何も書かれていないのだ。それの実証データの欲しさにやってみたものの、ヒューリの吸い込まれそうな瞳に何故かイリアの心拍数が上がる。
先程まで無意識で繰り返し行えていた呼吸も段々と荒くなっていくばかりで、これは流石に続けてられないと視線を逸らしてしまった。
「イリアの瞳は澄んでいて綺麗だな」
相手の気持ちを揺るがす戦法として書かれていたはずのものなに、何故かイリアの心臓が暴れ出すかのように煩いほど全身に鳴り響いた。
どうにか気持ちを抑えようと作り笑顔を浮かべて、ジュナの翼の装具の調整を言い訳にその場から立ち上がり真っ赤に茹で上がったその顔を隠すように逃げた。