研究オタクな令嬢は、ドラゴン【研究対象】に夢中。
『汝、相手の気持ちを動かしたくば、
まずは笑顔を向けるべし。
相手にはそれが好意として伝わるであろう。
自然な笑顔で飾らない事を心がけるべし』
次の日、イリアは家から持ってきた恋愛指南書をカデアトで実践すべく注意点をよく読み込んでいた。
笑顔、そう書かれたページに向かって微笑んで見るが、傍から見たら不気味に思われるのではないかとすぐさまキュッと口を結んだ。
難題から取り掛かってしまったのだと、指南書の最初に書かれた戦法の実践に挑むことにしたのだ。
ドラゴン達の研究をしている途中、すぐ隣でヴァイルの翼の手入れをしているヒューリに笑顔を向けた。
「ヒューリ、今日もいい天気ね」
「そうだな」
突然の話題にも関わらず彼は不審に思うことなくイリアの笑顔に爽やかな笑顔を返し、ヴァイルとじゃれ合って楽しそうに笑うヒューリの笑顔に、イリアの胸がざわついた。
イリアの笑顔よりも何倍も輝かしいその笑顔に、負けを認めざるを得なかった。
ーー効果なし!次……次よ!!
ぎこちなくなる笑みを何とか崩さぬようにしつつ、指南書にバツ印を書いて次のページを捲った。
まだ読み込んでいないページを隅々まで読み漁っていると、ジュナの体がまたしても少し高く浮いた。
「すごいわ!ジュナ!!」
一先ず指南書の内容は後回しにしてジュナに付き合っていると、装具のズレが生じボルトが緩んでいた。もう一度イリアの力で精一杯絞めたとしても風圧のせいですぐ緩んでしまう。