研究オタクな令嬢は、ドラゴン【研究対象】に夢中。
慣れない動きばかりをしたせいか体のあちこちが悲鳴を上げるかのように軋み、痛みが全身に走る。
その日の特訓は終わったというのにやり切った感じはまるでない。
ーーツケが回ってくるってこういうことなのかしら……。
この家にやって来た当初から貴族令嬢としての意識を持ち、立ち振る舞っていれば今のこの残念すぎる結果にはなってなかったはずだと、遠い過去の自分を叱責したかった。
そんなことをする暇があったら今はとにかくダンスを習得するべく、血も汗も涙も何もかも流してでも奮闘するしかない。
明くる日も鬼のような顔をしたエルメナとその使用人とのダンスの猛特訓が始まる。
日によってやってくるエルメナの使用人が変わるせいで、その相手の歩幅を意識しなければ上手く動く事ができず何度も足が縺れてしまう。
相手の足を踏んでしまうことを恐れたイリアは足元ばかりに視線がいってしまい、余裕のない様子ばかりがエルメナの目に止まる。
「ターンする時は花を咲かせるようにイメージしながら!」
エルメナの刻む四拍子に何度も何度も合わせてみようとしても、ただ相手の動きに合わせることばかりに気を取られていくばかり。
だがイリアの気持ちは焦りで滲むことはなかった。
頑張れば頑張った分だけ結果が着いてくることは、この一ヶ月以内で成長していく自分が何よりの証だった。