研究オタクな令嬢は、ドラゴン【研究対象】に夢中。



***

そよ風の気持ちよさに目を細めながら、隣に伏せるヴァイルの鱗をそっと撫でた。

日々の令嬢としての特訓が幕を閉じた今、達成感で満ち溢れていた気持ちがようやく落ち着いてきた。

指先の傷は何一つとしてないが、エルメナには言えない足の傷
がじんと滲む。その痛みが努力してきた結果なのだと、靴の上から痛みを感じる部分をそっと摩った。

お茶会まで残された時間はのんびり寛いでいてもいいとエリーから言われたせいか、今日の研究はどうしても身が入らないでいた。

それもそのはず、寝る間も惜しんで日中は慣れないダンス練習に明け暮れ、夜はドラゴンの研究をするという過酷な時間を過ごしていたのだ。

もう体力の限界が近いところまで来ていることにようやく気づいたが、習慣というものは怖いもので体が勝手に動いてしまうのだ。

「傷の具合は何も異常はなし……それに村の人達の薬の影響も問題はなし。私、結構絶好調なんじゃない?」

今にも落ちそうな瞼を必死に留めながらヴァイルに微笑んで見せるが、その瞳には心配の念が宿っている。

「キュー……」

「ジュナに作った装具も、ヒューリが村の人達にも伝授してくれたお陰で他のドラゴンも飛べるようになりそうだし……色々と良かったなあ」

ヴァイルの心配を他所に、着々と進めてきた実験や研究が身になっていることに浸っていた。




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