秒速ファシネイト
――放課後。
「一条凪。今日一緒に帰る?」
噛まずに言えたー!!!
私は腕組をして、まだ自席で帰り支度をしている一条凪を見下ろしそう言った。
密かに胸中で狂喜乱舞していることは絶対に顔に出さず、なるべく真顔を心がける。
一日中この瞬間のイメトレをした甲斐があった、私…!
この私に誘われるなんて史上初前代未聞の大快挙。
てっきり、すぐに「オッケー」の返事がくると思ったのに。
「一緒に帰りたいの?」
一条凪は口元にわずかに笑みを浮かべてそう言った。