秒速ファシネイト
ガタリ、と一条凪が席から立ち上がった。
購買にでも行くのだろうか、
焦りが募って無意識のうちに一条凪をガン見していると、視線に気づいた一条凪とばちっと目があった。
「…なに?木村さん、そんなに俺を睨みつけてどーしたの?」
いつも通り涼しい顔の一条凪。
なんか、むかつく。
「そー思うってことは、睨まれるような覚えでも何かあるわけ?一条凪」
つい応戦してしまった私に、真子が小声で「またはじまったよー」と呟いた。
「そっか」
くすり、一条凪が笑う。いつもの笑い方。
「それじゃ俺の勘違いかな。じゃーね」
そう言って歩き出そうとした一条凪のワイシャツのすそを
「…っ待って」
思わずつかんだ。
振り向いた一条凪の表情は、緊張でよく見えない。
「ちょっと野暮用。顔かして?」
勢いのまま、一条凪を拉致した。