秒速ファシネイト
「わーすごいこのたまご焼き、黒色だー」
「……うっうるっさい!それは奇跡的に焦がしたやつなの!!」
棒読み口調の一条凪。むかつく。
人気のない階段に座ってお昼を食べる私と、一条凪。
私のお弁当は人並みだと思ってたけど、それですらなかったらしい…と悟ったのは、一条凪のお弁当を開いた瞬間。
「…これ本当に一条凪が作ったの?」
見た目も味も、今まで食べたお弁当至上ダントツで一位なんだけど。
「そうだけど?まあ今日は手抜きの方」
「…へえ」
嫌味か。ぜったい嫌味だろ。
内心で怒りながらも和風ハンバーグを口にいれる。
…んー、やっぱりすっごくおいしい。
モグモグ味わう私を見下ろして、一条凪が笑った気配。
「なにニヤニヤして。なんかバカにしてる!?」
「別に。木村さんのお弁当おいしいよ」
「ぜったい嘘」
「木村さんがそう思うのならそうかもね」
「そこは否定しなよ!!」