秒速ファシネイト
「おい見ろよ、木村麗美だぜ!」
「今年の一年で一番美人っていう?」
「一年どころか学校一だろ!」
「やべ、すげー可愛い、芸能人みてー」
そんなヒソヒソ声と、視線が注がれていることを十分に自覚して私は今日も颯爽と登校する。
改めまして私、木村麗美。高1。
十人がいれば十人が振り向く美貌の持ち主。
おまけに頭だって悪くない。
偏差値高めのこの高校でも、常に学年10位以内をキープしている。
運動神経だって抜群だし、まさに才色兼備。文武両道。高嶺の花。
全て私のためにあるような言葉だ。
当然、交際を申し込まれたことだって数知れず。
だけど、どんなに熱い愛の告白を受けても私の心が動くことはなく。
つーか、私に似合うレベルの高い男なんて滅多にいないし。
妥協してダサい男と付き合うくらいなら彼氏なんて全然いらない。
そう思ってたのに……