秒速ファシネイト
その瞬間心臓がドコドコドコーッと物凄い音で飛び跳ね始めて、グルングルン回る。
いくら私の手の上からとはいえその速すぎる心臓の鼓動がバレるんじゃないかと、私は慌てて一条凪から離れた。
「も、もも、もう大丈夫!ご、ご心配あり、ありがとう」
「そう?ならよかった」
赤くなっているであろう顔を見られたくなくてそっぽを向く私の横顔に、ふっと一条凪が涼しげに笑った気配。
「じゃ」
そして一条凪は私に背を向けると廊下を歩いていった。
…なんか腑に落ちない。こんなのおかしい。
この私がこんなにドキドキして、一条凪は特に何でもなさそうに、いつも通りで。
…なんか…猛烈に悔しいんですけど!?
「一条凪っ!!」
私はその華奢な背中に声を張り上げると、振り向いた一条凪に向かってビシッと人差し指を突きつけた。
「今ここで宣言する。
私は、あんたを落とすっ!!!」
「………は?」
「あんたをこの私に惚れさせて、惚れさせまくって、虜にしてあげる!!
この私なしでは生きていられないくらいねっ!!!」