秒速ファシネイト
…じゃあ私はその作戦にまんまと引っかかったってこと!?
「まさか落とす宣言されるとは思ってなかったけどね」
そこでようやく一条凪の腕の力が緩んだ。
押し付けられていた一条凪の胸から顔をあげる。
そこには、優しく私を見下ろす漆黒の瞳があった。
「まだ、信じられない?」
「…信じていいの?」
「もちろん」
「じゃあ…そうする」
なんか、一条凪の顔をまっすぐ見れなくてそっぽを向く私に、一条凪がくすりと笑った。
両想いになったと思われるこの状況でも、やっぱり一条凪だけ余裕たっぷりで。私はいっぱいいっぱいで。
「っ!?」
少しでも、一条凪の余裕そうな顔を崩してやりたくて
一条凪のネクタイを引っ張って
今度は私からキスした。