秒速ファシネイト







――さんざん一条凪にキスされて




もうなんか恥ずかしすぎて早く帰ろうとする私に、一条凪が「ちょっと待って」と玄関先で一本の傘を差し出してきた。





……これって。






「木村さんが俺に貸してくれた傘。中3の時にね」




「……なつかしい。ほんとに私のだ。これ当時お気に入りで…」




「お気に入りなのに、貸してくれたんだ?」






くす、と笑う一条凪の笑い方はいつも通りなのに




なんかその瞳は、いつもよりも






――甘い。








「て、ていうか、さあ」







じっと見つめてくる一条凪の視線に溶かされそうになって思わず視線を逸らす。







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