秒速ファシネイト
一瞬、時が止まったようにその場に立ち尽くした一条凪だけど、すぐにその口元に涼し気な笑みを浮かべて、私に近づいてきた。
「へぇ、そうなんだ、知らなった。木村さんって俺のこと好きなの?」
「……は?そっ、そんなわけないでしょ!?」
この恋はされても、することなんてなかった私が片想いなんて…そんなの知られるのは屈辱的すぎる!
「ただ、あんたが私に全く興味ないのが気にいらないの。そのムカつく涼し気な顔を崩してやんなきゃ気が済まない」
「…興味ない、ねー」
一条凪が棒読み口調で私のセリフを繰り返す。
「なんか文句ある!?」
「別に。全然?むしろ楽しみ。
俺を木村さんなしじゃ生きられない体にしてくれるんでしょ?」
一条凪の、男子にしては細く長い指が、私の顎をツイッと軽く持ち上げる。
「やってごらんよ。やれるもんなら」