昭和懐妊娶られ婚【元号旦那様シリーズ昭和編】
「あっ、起きた? その花、青山財閥の総帥が届けてくれたんだよ。病室にも来てくれたみたいでね」
 私がいるベッドのそばでパイプ椅子に座って本を読んでいた弟が、顔を上げて私を見た。
 鷹政さん、ここに来たんだ。
 夢で鷹政さんと幸太くんが出てきたのは本当だったのかな。
「私……なんでここに?」
 上体をゆっくりと起こして直史に尋ねると、彼は部屋のカーテンを開けながら説明した。
「会社で倒れたらしくて、春子さんが家の車を呼んで病院まで運んでくれたんだ。総帥にも春子さんが知らせてくれたみたいだよ」
 そう言えば、春子さんと話している時に気分が悪くなったんだっけ。
「そうなのね。でも、病院なんて大袈裟ね」
 弟の話に相槌を打ちながらそう返したら、直史は少し怖い顔で言う。
「大袈裟じゃないよ。病院の先生は過労だって。点滴が終わったら帰っていいって言ってたけど、もう数日入院してたら? 家に帰ったらすぐ家事とかするでしょ?」
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