昭和懐妊娶られ婚【元号旦那様シリーズ昭和編】
私を助けようとして口から出まかせを言っているのかと思ってハラハラしたが、鷹政さんはとても落ち着いていた。
「お前も橋本家の者なら青山家に伝わる金の指輪の話くらい聞いたことがあるだろう? この鷹が彫刻された指輪は、青山家の後継ぎが自分の伴侶に渡すものだ」
 え? この指輪って青山家に伝わる指輪だったの?
 でも……私は……この指輪を天使のように美しいお兄さんからもらった。
 ……美しいお兄さん。
 ああ!
 過去と現在が繋がる。
 鷹政さんがあの葉山のお兄さんなの?
「噂ではその指輪は消えたと聞いているがな」
 橋本清十郎がジッと指輪を見据えると、鷹政さんは氷のように鋭い眼差しで告げた。
「俺が十五年前に凛に渡したんだ。青山財閥の総帥の許嫁を橋本財閥の御曹司がさらったとなれば、世間は大騒ぎするだろう。警察だってバカじゃない。青山と橋本のどちらにつくと思う?」
 鷹政さんに問われ橋本清十郎は数秒沈黙するが、急にハハハッと声をあげて笑い出した。
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