昭和懐妊娶られ婚【元号旦那様シリーズ昭和編】
「右京、なにかあれば伯爵家に資金援助する。但し、伯爵に金は渡すな。凛の弟が使えるように手はずを頼む。お前が彼をサポートしてくれ」
 彼女の弟はしっかりしているし、金をうまく使ってくれるだろう。
「仰せのままに」
 右京はゆっくりと頷いた。

 次の日の朝、弥生に凛の部屋を用意させ、午後は伊織を連れて凛のいる病院に向かった。
 彼女の病室に行くと、橋本清十郎の声が聞こえてドアの前で足を止めた。
「それは保科伯爵から凛ちゃんを一万円で買ったからだよ」
「一万円で買った?」
 橋本清十郎の発言にかなり動揺しているのか、凛の声は震えていた。
「そう。君たちのお父さんはギャンブルで多額の借金をしてね。俺が立て替えてあげたんだ」
 彼の声は優しいが、その目はどす黒く光っているに違いない。
「そんな……」
 顔を見なくても彼女が今どんな表情をしているか手に取るようにわかる。
 きっと顔面蒼白になっているはずだ。
 
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