昭和懐妊娶られ婚【元号旦那様シリーズ昭和編】
「それはどうかな?」
 橋本清十郎を睨みつけ、凛のもとへ行く。
 凛は俺の顔を見て驚いていたが、彼はなにか楽しい余興でも見るかのように俺に目を向けた。
「部外者がどうしてここに?」
「部外者ではない」
 橋本清十郎をまっすぐに見て訂正すると、凛が首に下げていた指輪を手にしてはっきりと告げた。
「凛は俺の許嫁だ」
キラリと光る金の指輪を見て今までずっと余裕綽々といった顔をしていた橋本清十郎が微かに目の色を変える。
 俺はそんな彼を見据えながら話を続けた。
「お前も橋本家の者なら青山家に伝わる金の指輪の話くらい聞いたことがあるだろう? この鷹が彫刻された指輪は、青山家の後継ぎが自分の伴侶に渡すものだ」
 その説明に横にいた凛が驚いて俺をまじまじと見つめた。
 一方、橋本清十郎は真剣な眼差しで指輪を見ている。
「噂ではその指輪は消えたと聞いているがな」
「俺が十五年前に凛に渡したんだ。青山財閥の総帥の許嫁を橋本財閥の御曹司がさらったとなれば、世間は大騒ぎするだろう。警察だってバカじゃない。青山と橋本のどちらにつくと思う?」
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