昭和懐妊娶られ婚【元号旦那様シリーズ昭和編】
「あー、こっちは真面目にやろうとしてるのに、本当調子狂うわね」
髪をかき上げながら素に戻る弥生を右京がさらっと毒を吐きつつフォローする。
「凛さま、弥生はがさつな女ですが、悪意はないですから」
「そうそう。いつも怒ってるみたいな感じだけど、本当は照れ屋なだけなんだよ」
 右京に倣って幸太もそんな言葉を口にすれば、弥生はふたりをギロッと睨みつけた。
「あんたたち、好き勝手言わないでよ。夕飯抜きにするわよ!」
「弥生、ちょっと落ち着こうか。凛さまの弟さんもいるからね」
 伊織が控えめに注意して初めて彼女は凛の弟の存在に気付いた。
「あら、やだ。……他にもお客さまがいるなら先に言ってよ」
 顔を赤くする弥生に軽く謝って直史くんを紹介する。
「悪い。彼は凛の弟の直史くんだ。これから凛がどういう環境で暮らすのか見てほしくて来てもらったんだ」
「保科直史です。姉のことよろしくお願いします」
 彼はうちの面々を見てにこやかに挨拶する。
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