昭和懐妊娶られ婚【元号旦那様シリーズ昭和編】
 その後、直史くんを交えて食堂で夕飯を食べたが、みんな打ち解けて話をしていた。
 彼が帰ると、凛は弥生に手伝ってもらって浴場に向かった。
 その間俺は書斎で仕事をしていたのだが、祖父から電話がかかってきた。
「なにか用ですか?」
 冷たく応対するが、祖父は気にした様子もなく楽しげに言う。
《凛ちゃんをさらってきたそうだな》
「さすが情報が早いですね」
 おそらく部下に俺のことを見張らせていたのだろう。
 隠居して暇な時間ができたか。
《ついに身を固める決心をしたか。だが、親が毒親とはいえ、相手は保科伯爵。凛ちゃんは伯爵令嬢。筋は通せよ》
 保科伯爵のことも調べたようだ。
 祖父が俺と凜とのことに反対しないのは、彼女の人柄が気に入ったというのもあるが、父の件で寛容になったからだと思う。
 父が青山家を出ていったことを祖父は悔いていた。
 フッと笑みを浮かべ、「わかっています」と祖父に告げて電話を切る。
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