昭和懐妊娶られ婚【元号旦那様シリーズ昭和編】
 ただ無我夢中で彼のキスに応えたら、伊織さんの声がした。
「鷹政さまー。鷹政さまー。どこですか?」
 ハッと我に返る私と彼。
「残念。邪魔が入ったか」
 私の唇に名残惜しそうに触れると、彼は優雅な動作でベッドを出て部屋から消える。
 自分もベッドから起き上がるが、いつの間にか浴衣がはだけて下着が見えていた。
 これは絶対に鷹政さんに見られたに違いない。
 キスだって……あんな激しいのしちゃうし……。
「キャー、もう恥ずかしい!?」
 頬に両手を当て叫んだら、弥生さんが入ってきた。
「凛さま、なにひとりで騒いでるの?」
 怪訝な顔をする彼女に浴衣の襟元を直しながら笑ってごまかす。
「あっ、いや……その……なんでもないです」
「さっきお兄ちゃんが、鷹政さまにどうして凛さまの部屋から出てきたんですかって問い詰めてたわよ。一応結婚前なんだから、程々にね」
 含み笑いをしながら私に注意する弥生さんに声を大にして否定する。
「まだキスしかしてません! ……あっ」
 
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