昭和懐妊娶られ婚【元号旦那様シリーズ昭和編】
「橋本財閥が不穏な動きをしています。現在うちが買収交渉をしている電力会社に接触してうちよりいい条件を提示しているらしいです」
 資料にあるのは九州の電力会社の名前だった。
「……九州か。そう言えば、橋本財閥の総帥の実家が鹿児島だったな」
 電力会社の分布図を見ながらポツリと呟くと、右京の横にいる伊織が言った。
「噂では、橋本清十郎が明日九州に行くとか。そこで話をまとめるつもりなのかと」
 橋本清十郎……青山国際通商の件では失敗に終わったからその腹いせか?
 だが、私的な恨みもあるかもしれない。
 俺はペンを持ち分布図の数カ所に丸をつけた。
「多分、九州の南は橋本が是が非でも買収するだろう。そこは捨てて、俺が印をつけたところだけ買収しろ。福岡、長崎は流通の拠点だ。絶対に橋本には譲れない。必要があれば俺も九州に出向くが」
 右京の目を見てそう話をしたら、彼はメガネのブリッジを上げて、小さく笑った。

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