昭和懐妊娶られ婚【元号旦那様シリーズ昭和編】
12、彼女と一緒に歩んでいく
「あれ? 凛がいない」
 じいさんとの話が終わって彼女の姿を探すが、会場には見当たらない。
 近くにいた松平春子に声をかけ、「凛がどこに行ったか知らないか?」と尋ねたら、彼女も会場内を見渡した。
「化粧室に行くって言ってましたけど……いないわね」
 顎に手を当てながら答える彼女にさらに突っ込んで聞いた。
「化粧室に行ったのはどれくらい前?」
「二十分くらい前かしら。長すぎるわ。私、化粧室を見てきます」
 普通は化粧室に二十分もいないはず。
 急に具合が悪くなったと考えられなくもないが、妙な胸騒ぎがする。
「ありがとう。助かる。俺はデッキの方を探してみる」
 松平家の令嬢に礼を言って、足早に大広間を出る。
 そんな俺に気付いて伊織と右京、それに凛の姉弟が集まってきた。
「鷹政さま、そんな血相を変えてどうされました?」
 伊織が俺の肩に手をかけて問うと、彼の顔も見ずに口早に言った。
「凛がいない。なにか嫌な予感がする」
 
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