昭和懐妊娶られ婚【元号旦那様シリーズ昭和編】
「鷹政さん、まさか……?」
「舌を噛むなよ」
 多くは語らず彼女の身体をしっかりと抱いて足から海に飛び込んだ。
「キャア!?」
 驚いた凛が叫ぶ。
 その時、彼女がはめている金の指輪が、月の光を受けてキラリと光った。
 この状況下で不思議なくらい落ち着いていた。
 きっと指輪が俺たちを守ってくれる。
 ドボンと着水して、身体が三メートルくらい沈んだ。
 暗い海。船のスクリューに巻き込まれないよう凛の身体をしっかりと掴んで浮上すると、誰かがライトで照らしてくれているのか水面が明るくなった。
 凛を支えながら顔を出したら、凛の弟がライトで水面を照らしていて、彼の隣にいる右京がなにかを投げて叫んだ。
「今、助けに行きます!」
 弧を描いて俺たちの方に飛んできたのはロープに繋がれた浮き輪。
 それを掴んで凛に渡そうとしたが、「凛、浮き輪を」と言っても彼女は返事をしなかった。
 身体の力は抜けていて、ぐったりしている。そんな彼女の頬を何度か叩いた。
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