昭和懐妊娶られ婚【元号旦那様シリーズ昭和編】
 過去に何人も恋人がいた経験豊富な彼女ならきっと知っているはず。
 縋るような目で助言を求めたら、彼女は一瞬呆気に取られた顔をするも、私の背中を力いっぱい叩いて元気づけた。
「なにくだらないことで悩んでるのよ。あなたの旦那さまはあの完全無欠の氷帝よ。全部彼に任せればうまくいくわ。作法なんてないもの」
「うっ、痛いよ、春子さん。でも、本当にそれで大丈夫なの?」
 半信半疑の私に彼女は優しい笑みを浮かべる。
「なにも考えずにドーンと氷帝の胸に飛び込みなさい」
「ドーンと?」
 そんなドアを蹴破るような感じでいいのだろうか?
 聞き返したら、彼女はクスリとしながら頷いた。
「そう。ドーンとよ」
 春子さん、なんだかおもしろがっていませんか?
 大事な初夜なのに、適当すぎない?
 時間は刻一刻と近づいている。
「凛、食べないのか?」
 不意に鷹政さんに声をかけられるも、気もそぞろな私はぎこちなく笑って返した。
「もうちょっとしたら食べます」
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