昭和懐妊娶られ婚【元号旦那様シリーズ昭和編】
そう返したが、きっと食べないだろう。全然お腹が空いていない。
「凛、今ダイヤのイヤリングが落ちたよ」
 鷹政さんからダイヤと聞いてカッと目を見開き、床を見る。
「嘘!」
 なくしちゃ大変!
 これも弥生さんの話によると、青山家の女主人に受け継がれる宝石らしい。
 慌てて床に落ちたイヤリングを身を屈めて拾い上げたら、目の前に鷹政さんの顔があって、彼にチュッとキスされた。
 数秒間固まる私。
「た、た、鷹政さん、なにを?」
 ようやく声が出るようになったが、ビックリして言葉がつっかえる。
 激しく動揺する私を見て、彼は悪戯っぽく目を光らせた。
「凛が心ここにあらずって感じだったから」
 確かに披露宴どころじゃなくてずっと初夜のことを考えていた。
「公衆の面前ですよ。みんなに見られたら……」
 起き上がって周囲を気にする私とは対照的に彼は余裕の表情。
「大丈夫。見られてないから。やっと俺を見た」
 私の頬に手を添えにっこりする彼に小声で謝った。
「……ボーッとしててすみません」
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