昭和懐妊娶られ婚【元号旦那様シリーズ昭和編】
 ずっと隣にいるんだもの。上の空だったらすぐに気がつくわよね。鷹政さんだし。
「初夜のなにが心配?」
 私の悩みをクールな顔で言い当てられて絶句するも、彼に「もう夫婦なんだから隠し事はなしだよ」と促され、正直に打ち明ける。
「初めてだからよくわからなくて、不安なんです。うまくできなかったらどうしようって。鷹政さんをがっかりさせちゃうんじゃあ」
 初夜の相手に相談することにいささか疑問を感じつつも、『夫婦なんだから』と言われてしまっては仕方がない。
「愛する妻を抱くのにがっかりなんかしない」
 私の目を見て一言一句はっきりと口にする彼。
「鷹政さん、声が大きい!」
 彼の口を手で塞いだら、壇上で締めの挨拶をしている清さんと目が合い、彼は私に向かってウインクした。
「あっ」
 思わず変な声を出してしまうが、清さんは気にせず挨拶を続けた。
「どうか皆様、ふたりを温かい目で見守ってくださいますよう、心からお願いを申し上げます」
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