昭和懐妊娶られ婚【元号旦那様シリーズ昭和編】
　鷹政さんのその質問にお腹がグゥと鳴る。
「熱々のカニクリームコロッケです！」
　彼の目を見て嬉々とした顔で答えたら、写真機のシャッター音がした。
「いい表情でしたよ」
　右京さんはメガネのブリッジを上げて満足げに微笑む。
　ああ、私を笑顔にするために鷹政さんはその質問をしたのですね。
　身内よりも私の性格をよくわかっているような気がする。
　再会して彼とよく話をするようになったきっかけはお弁当だったものね。
　思えばあの時、おにぎりの具について鷹政さんに熱く語ってしまった。
　それで、私が料理や食べ物に興味があると悟ったに違いない。
　それにしても、お腹が空いた。
　カニクリームコロッケ食べたかったなあ。
　少し遠い目をしてお腹を押さえる私を見て、鷹政さんがククッと肩を震わせる。
「そんな悲しい顔をするな。披露宴が終わったら、用意してもらうから」
　こういう鷹政さんの優しさに胸がキュンとなる。
　単純な私はその言葉にパアッと目を輝かせた。
< 243 / 260 >
表紙・目次

この作品をシェア

pagetop