昭和懐妊娶られ婚【元号旦那様シリーズ昭和編】
 今、窓からは綺麗な月が見える。
「凛、お風呂に入ってくるといい。俺はちょっと電話をかけるから後で入るよ」
 外の景色を見ていたら鷹政さんに肩を叩かれ、「はい」と頷いた。
 女将さんの案内で浴場に向かう。
「あっ、タオルと浴衣忘れました」
 手ぶらで来たことに気付いたが、女将さんは安心させるように笑った。
「タオルは脱衣所にございます。浴衣は後でお持ちしますね。青山さまだけですので、ゆっくり楽しんでください」
【女湯】と書かれた暖簾の前で女将さんは微笑みこの場を去る。
『青山さま』と女将さんに呼ばれ、一瞬ポカンとしてしまった。
 女湯の暖簾をくぐって引き戸を開けると脱衣所があって、タオルが置かれていた。
 服を脱いで浴場に向かう。
 内風呂がふたつと露天風呂がひとつあって、内風呂は泳げそうなほど広かった。
 ゆっくり楽しみたいところだが、お風呂の後はいよいよ床入りだということを思い出した。
「そうよ、初夜」
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