昭和懐妊娶られ婚【元号旦那様シリーズ昭和編】
 葉山に来て浮かれてしまった。
 身体をいまだかつてないくらい念入りに洗い、内風呂に静かに浸かる。
 綺麗に透き通ったお湯で、身体が清められる気がする。
 これもまるで儀式のよう。
 露天風呂にも浸かろうと思ったが、心の余裕がなかった。
 神前式も緊張したけれど、今はもっと心臓がドキドキしている。
 ふと左手に光るふたつの指輪が目に映り、ジッと眺めた。
 今日から私は青山凛になった。
 名前が変わるのはなんだか変な感じがするけれど、そのうち新しい名字にも慣れるのだろう。
 初夜が終われば名実ともに私は彼の妻になる。
 政略結婚が多いこの時代に愛した人と結ばれる私は幸せ者だ。
 そう考えると、この緊張さえも贅沢なものに思えた。
 彼との出会いから今までのことを振り返る。
 この葉山の地で彼と出会って、青山国際通商で再会して……そして、今日私は彼と結婚した。
 すべてが夢のようだが、これは現実。
 誰よりも愛している彼を一生支えていきたい。
< 250 / 260 >

この作品をシェア

pagetop