昭和懐妊娶られ婚【元号旦那様シリーズ昭和編】
 二十分ほど浸かって、脱衣所に戻ったら、籠に白い夜着が置かれていた。
 多分、弥生さんが用意したものだろう。
『夜着は用意したからしっかりね』と初夜のことを聞く前に彼女に言われたのだ。
 ハハッと乾いた笑いが込み上げてくる。
 白無垢、純白のウエディングドレスに白い夜着。
 朝から晩まで白い服しか着てない。
 昔、花嫁が白無垢を着るのは、嫁ぐ家に染まるためだって誰かが言っていたような気がする。
 夜着が白いのもきっと同じような意味なのだろう。
 私は生まれ変わる。
 夜着に袖を通して鏡を見た。
 顔がちょっと強張ってはいるが、覚悟はできた。
 大丈夫。鷹政さまが相手だもの。
 部屋に戻ると、布団がふた組敷かれていて、益々緊張してきた。
 だが、鷹政さんの姿がない。
 お風呂かな?
 そう思ったのだが、窓の外に目をやると彼がウッドデッキにいた。窓を開けて外に出たら、デッキチェアに座って寛いでいた彼が私の方を振り返る。
 鷹政さんの夜着は紺色だった。

< 251 / 260 >

この作品をシェア

pagetop