昭和懐妊娶られ婚【元号旦那様シリーズ昭和編】
「お前が幸せにしてやればいい話だ。父親の鷹信と違ってお前ならそれができるのではないか?」
 俺の結婚の話となると祖父はしつこい。
 最近は俺の子供を抱くまでは安心してあの世に行けぬというのが祖父の口癖。
 おまけに伊織もじいさんの肩を持つ。
 実は凛を車で送っていった夜、彼女の家のことが気になって伊織に調べてもらった。
 彼女は元大日本帝国陸軍大佐だった保科伯爵の次女。保科伯爵は数年前までは社交界の中核を担っていたが、軍を退役し、二年前の金融恐慌で没落。最近はギャンブルに興じて、懐事情も相当厳しいらしい。伯爵には他に子供がふたりいるが、働いているのは凛だけ。凛の姉は家でのんびり暮らしていて、弟は大学に通っているそうだ。
 伯爵は凛の姉と弟をかわいがり、凛のことを使用人同様に扱っているとか。
 それは、伯爵の夫人が亡くなったことが原因のようだ。
 伯爵夫人は身体が弱かったが、後継ぎを欲しがったそうで、二番目に生まれた凛のことは見向きもしなかったらしい。
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