昭和懐妊娶られ婚【元号旦那様シリーズ昭和編】
それで、凛が十五年前に泣いていた理由も、つい最近お昼休みに泣いた理由もなんとなくわかった。
 親に愛されずどれだけ辛かっただろう。
それなのに、家族を支えようと頑張っている。
 伊織もそんな凛を気に入っているようだ。
 事あるごとに『凛さまのようなお嬢さまが青山家に嫁いでくれれば、皆喜びます』と俺に言ってくる。
「そうですよ。鷹政さまの味方は多い。私たちが全力で凛さまをお守りしますよ。あなたが唯一優しくする女性ですからね」
 じいさんの言葉を受けて伊織がにこやかに相槌を打つ。
 俺が女に冷たいのは、下手に相手をして面倒なことになりたくないからだ。
 青山の次期総帥夫人を狙う計算高い女はたくさんいる。
 だが、凛はそんな女どもとは違う。
 俺の世界に巻き込みたくない。
「だから、俺は結婚しないと言っている。彼女には干渉するな」
「その言い方が益々怪しいのう。あんなかわいい子じゃ、惚れておるのだろう?」
< 82 / 260 >

この作品をシェア

pagetop