昭和懐妊娶られ婚【元号旦那様シリーズ昭和編】
 仕事人間の俺は恋愛に興味がない。過去にも好きになった女などいなかった。
 頭にあるのは先祖が築き上げた青山財閥という帝国をどう守っていくかだけ。
 恋など俺には不要。伴侶もいらない。
 後継ぎが必要なら、青山の血筋の子供を俺の養子にすればいいだけのこと。
 凛についつい目が行くのは小さい頃の彼女を知っていて、俺が指輪をあげた相手だからだろう。
 そう自己分析するも、橋本清十郎が凛に絡むのを見るとイラッとした。
 この感情はなんなのか?
 自分でもよくわからない。
 それに、今日彼女にいなりをもらった時、もう会社には出勤しないのにどうして『凛、また作ってくれるか?』と口にしてしまったのか。
 おまけに彼女の額にキスまでして……。
 いつもの俺じゃなかった。
「総帥、いい加減にしないと、歩いて帰ってもらいますよ」
 ギロリと睨みつけると、祖父はおもしろそうに返した。
「あー、鷹政は怖いのう。わかった、わかった」
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