昭和懐妊娶られ婚【元号旦那様シリーズ昭和編】
「好敵手というやつか。だが、日本を支配するのは青山じゃ」
 キラリと光る双眸。
 今年八十になるというのに、その鋭い眼光に衰えはない。
「わかっています。橋本だろうが朝比奈だろうが追随は許しませんよ」
 笑みを浮かべて言えば、じいさんはどこか遠くを見つめてフッと笑った。
「もうわしの出番はないな。心残りはお前の子供を抱くことだけじゃ」
 またその話か。
 じいさんの言葉に脱力する。
「くどいですよ。俺は結婚はしないと何度言ったらわかるんですか。俺以外にも孫はたくさんいるんですから、曽孫くらいいっぱい抱けますよ」
 毎日のように繰り返しているこのやり取りに頭痛がしそうだ。
「ふん、わしは諦めんぞ」
「努力が無駄になるだけです」
 企み顔でニヤリとする祖父にぴしゃりと言ってその話題を終わらせた。
 その後、青山邸で青山系列の企業の社長を集めて開かれた会議で、祖父は引退を表明。次期総帥に俺を指名したが、誰ひとり反対はしなかった。
 この日から、俺が青山財閥の総帥となった。
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