昭和懐妊娶られ婚【元号旦那様シリーズ昭和編】
 姉のように美人でもない私が行ってなんになる?
 胸がチクッとするのを感じたが、夕食後は平静を装って琴さんと一緒に後片付けをした。
「今日の旦那さまは凄くご機嫌でしたね」
 皿を布巾で拭きながら父のことを口にする琴さんの話に相槌を打つ。
「父は姉に希望を託しているのかも。パーティで誰かに見初められれば、うちは安泰だもの。私もお姉さまがいい人と出会って幸せな結婚をしてくれたら嬉しいわ」
 姉はいつも家にいるし、もうパーティにもなかなか呼ばれなくなったから、男性との出会いが少ない。
 青山財閥主催のパーティは、地位のある独身男性がいっぱい集まるので姉にとって結婚相手を見つける絶好のチャンスだ。
「凛お嬢さまの幸せは?」
 琴さんに問われ、顎に手を当てながら考えた。
「ひとり立ちすることかしらね。いつかここを出てひとり暮らしをするの。直史だっていつか結婚するだろうし、邪魔な小姑にはなりたくないのよ」
 
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