不器用な恋〜独占欲が恋だと知ったのは君のせいだ
「…せーや…すき」

先程の衝撃以上に、心を鷲掴みされた感覚。

「…胸が苦しいんだけど、やばい、もう一度」

何度でも、この可愛い口から聞きたい。

「…好きなの…好き…ずっとすき…だったの……」

必死に俺をすきと言ってくれている姿に、歓喜で心が震える。

今、俺の気持ちを打ち明けるチャンスだと香恋を抱きしめたが、ズルリと力が抜けていく香恋。

「うそだろ。これからなのに…ほら、起きろ。起きてくれよ」

俺の計画は、見事に失敗した。

翌朝、香恋を起こした際、どこまで覚えているか確認したが、食後の後からの記憶はないらしい。

自分が俺の名を呼んだことも
可愛らしい唇で好きだと言ったことも
覚えていないなんて…

恋愛をしてこなった俺の未熟さが招いた結果だった。

今度は、香恋の酔っていない状況で仕切り直しだと決意するのだが、この時の勢いは、日が経つにつれ萎んでいくとは、この時は思ってもいない。

仕事に行く準備の為に、香恋が部屋に戻って行く気配を、浴室から感じでいた。

「はぁ…なんでこんなにドキドキするんだ。鎮まれよ」

胸を押さえても、欲望は張り裂けそうに昂っている。

素面で『聖也さん』と、恥ずかしがって呼ぶ姿は、可愛くて破壊力があり、仕事への活力が漲った体と昂った半身。

無意識に言った言葉は、勘違いさせるものとは思ってもいない。
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